5Gによってカーナビはどのように進化する?次世代におけるカーナビの活用方法
今やドライブの必需品と言っても過言ではなくなったカーナビゲーションシステム。つい数十年前までは地図を見て事前にルートを調べておき、実際にクルマで走りながら少しずつ道を覚えていったという方も多いのではないでしょうか。しかし、テクノロジーの進化とともにそのようなカーライフは一変。初めて訪れる場所であっても、カーナビがあれば迷わず到着できる時代になりました。
一口にカーナビといってもさまざまなタイプがありますが、最近ではスマホやタブレットに代表されるような通信ネットワークによって随時地図情報を取得するタイプのものも増えています。そこで今回の記事では、今後本格的な普及が見込まれている次世代通信規格の5Gによってカーナビはどのように進化していくのか、詳しく解説します。
そもそもカーナビとはGPSによって位置情報を取得し、それをもとにルート案内を行う仕組みのものが一般的ですが、GPSカーナビが登場したのは今からちょうど30年前。1990年に発売されたユーノス「コスモ」へ搭載されたのが始まりです。しかし、この当時はルート案内や目的地検索などの機能は搭載されておらず、単にディスプレイ上に地図情報と現在位置が表示されているようなものでした。
その後、地図情報をCDやDVD、HDDなどに記録して保存できるようになり、全国の地図情報がカーナビの中に集約されたことによって一気に需要が増加。オーディオ機能なども兼ね備えた高機能なカーナビが続々と登場し、価格も下がったことによって高級車だけではなく大衆車にもカーナビが装備されるのが一般的になってきたのです。
しかし、本体に地図情報を保存しておくということは年数が経過すると地図情報が古くなり、新しく完成した施設や道路が表示できないケースもあります。このような課題を解決するための方法として、現在ではスマホやタブレットなどの地図アプリのようにオンラインで情報を取得するカーナビも登場してきています。
参考<https://iot.kddi.com/column/5g_business/>
上記のように、5Gは4G/LTEに比べて最大20倍もの通信速度を実現し、遅延は10分の1、デバイス数は10倍もの差があることが分かります。これまで3G、4Gといったネットワークは携帯電話のモバイルネットワークとして活用されてきた歴史がありますが、5Gによって大幅に進化を遂げたことによって、もはや携帯電話だけにとどまらず、さまざまな産業に活用されることが期待されているのです。
そもそもカーナビの本質をあらためて考えてみると、快適なドライブを実現するための便利ツールであると同時に、地図を見ながら運転することによって起こる事故を未然に防いでくれるツールでもあります。そのような安全管理の面から考えてみても、5Gは自動運転技術にも大いに貢献しており、交通事故の大幅な軽減にも役立つことでしょう。
しかし、どれほど高度な技術によって自動運転が確立されたとしても、相手が人間で予期せぬ動きをとってしまうと事故が起こってしまうこともあります。自動運転車と人間のドライバーが混在するなかでは事故のリスクをゼロにすることは難しいといえるかもしれません。
自動運転車が本格的に普及し始めるまでには、法律をはじめとしてクリアすべき課題が山積していますが、自動運転車と人間が共存する交通社会を作る前提で考えたとき、カーナビは重要なコミュニケーション手段のひとつに進化していくのではないでしょうか。
目次
激変するカーナビ市場とこれまでの変遷

これからの自動車業界における変化
これからのカーナビの進化を予測するにあたって、少なからず大きな影響を受けると考えられるのが自動車業界そのものの変化です。これまでの自動車業界といえば、昭和から続く伝統的な自動車産業のように自動車そのものを製造して売ることがメインでした。自動車メーカーである以上は当然のことと考えることもできますが、多くのユーザーに自動車が行き渡り飽和状態となった現在、主なニーズは買い替えがメインとなっています。しかし、現在の日本は深刻な少子高齢化の状態に陥っているほか、景気も伸びず余裕のある暮らしを送っているのはごく一部。若年層のなかには低賃金で働く人も多く、とてもクルマを購入できるほどの余裕はないケースも多いのです。 そこで、現在の自動車業界では従来型のビジネスモデルのみに頼るのではなく、さまざまな新しい取り組みを行っているメーカーが増えています。たとえば残価型設定ローンによって月々の負担額を軽減する購入方法や、クルマを購入するのではなく借り放題として使えるサブスクリプション型ビジネス、さらにはMaaS(Mobility as a Service)というITと自動車を組み合わせたビジネスモデルも検討されています。 なかでも、今後もっとも大きな変革として考えられているのが自動運転技術の実現です。すでに一部の市販車には高速道路で半自動運転を実現できるシステムが搭載され始めていますが、今後さらにテクノロジーが発展し法規制や保険の問題などもクリアになっていくと、高速道路だけではなく一般道での自動運転も可能になると考えられます。5Gがカーナビ業界を激変させると考えられている理由
ここまでカーナビ業界や自動車業界における市場の変化を中心に紹介してきましたが、今後さらに大きな変化が起こっていくと予想されています。その大きなカギを握っているとされるのが、次世代通信規格の「5G」。なぜ5Gがカーナビ業界や自動車業界を変革すると考えられるのか、その理由について深堀りしていきましょう。そもそも5Gの特性とは
まずは5Gとはどのような通信規格なのか、基本知識として5Gの特性を簡単に解説します。 5Gを一言で表すとすれば、「高速・大容量、超低遅延、同時多接続を可能にするネットワーク」となります。もうすこし具体的に紹介するために、従来の4G/LTEのネットワークと比較した場合の数値を以下に記載します。4G/LTE | 5G | |
通信速度 | 最大1Gbps | 最大20Gbps |
遅延 | 10ms | 1ms |
接続可能デバイス数 | 最大10万 | 最大100万 |
コネクテッドカーの登場
カーナビ業界において関連性が高いとされているのが、コネクテッドカーとよばれるものの登場です。「コネクテッド」とは日本語で「接続された」という意味をもち、コネクテッドカーとはすなわちインターネットに接続された自動車のことを指します。 すでに一部のカーナビではインターネットに接続して地図情報などを取得するものも登場していますが、コネクテッドカーはさらに大きな概念の自動車です。たとえば以下のような機能が考えられます。- 自動車の燃料残量を自動的に計測し、目的地に到着するまでの間に給油タイミングをドライバーに知らせる
- メンテナンスの履歴をクラウド上で管理し、走行距離やパーツの状態、経過年数によって交換時期を知らせる
- 盗難などの被害に遭った際に位置情報を追跡する
自動運転技術の実用化
日本を含めて世界各国の自動車メーカーでは自動運転に関する研究開発が進んでいます。自動運転車にはさまざまなカメラやセンシングデバイス、通信端末などが搭載されており、まさに「動く通信機器」といっても過言ではありません。基本的には自動車側のIoTデバイスで取得したデータを自動車自身でAIなどを活用して適切な判断を行い、制御ができるのが理想的といえるのですが、実際にはスタンドアロンPCのように外部ネットワークに接続せず自動車だけで完結することは不可能です。ときには周囲の自動車と通信を行って衝突を回避したり、管制の役割を担うサーバーやクラウドにアクセスして指示を仰ぐ必要もあるでしょう。 しかしこのとき、通信に大幅な遅延が生じてしまうと制御のタイミングが遅れ、大事故につながってしまうことも考えられます。そのため、4G/LTEに比べて大幅に遅延が少ない5Gは自動運転技術に必要不可欠とされているのです。テクノロジーの力で交通事故はなくなるか?
