大画面化が進むスマートフォンやタブレットといったデバイスに比べて、取り付けスペースが限られているカーナビは2DINサイズなど手頃な大きさのものがメインでした。また、カーナビといえばメーカー純正のもの、またはオーディオメーカーが販売しているような高価な製品がこれまでは主流であり、取り付けのハードルも高いものでした。
しかし、スマートフォンやタブレットの登場でその様相は激変。地図アプリでカーナビの機能が利用できるようになったほか、音楽や映像の再生もスマホひとつで対応できるため、カーナビ本体にスマホのOSを対応させた製品も登場してきました。これらは「Androidナビ」ともよばれ、従来のカーナビからAndroidナビへ変更するユーザーも増加しています。
車内でさまざまなエンタメが楽しめるAndroidナビは、高級車やスポーツカーだけではなく、どんな車にも対応できます。今回はAndroidナビについて詳しく解説していきましょう。
目次
カーナビは本来の役割である経路案内だけではなく、むしろエンタメ要素がメインになりつつあります。この流れは日本のみならず、世界の自動車メーカーの例を見てみると分かりやすいため、いくつかの事例を紹介します。
テスラの車内でNetflixやYouTube試聴が可能に
自動車をまるでデジタルデバイスのように「アップデート」するという新たな概念を作った米国の自動車メーカー、テスラ。これまでの常識を打ち破る自動車を続々と開発し、まるで車内にタブレットを装備したかのようなカーナビは革新的なデバイスといっても過言ではありません。
実はテスラ社のカーナビはこれまで、NetflixやYouTubeといった動画コンテンツを見ることはできなかったのですが、2019年のアップデートによってこれらが可能になりました。テスラはEVのため、充電をするために一定の待ち時間が必要となります。多くのユーザーは自宅で充電をしたり、外出先で充電をする際にはその間にショッピングを楽しんだりするのが定番ですが、今回のアップデートによって車内の大型モニターで映画を楽しみながら充電の完了を待つということもできるようになりました。
テスラ、車内の大型ディスプレイでNetflix / YouTube視聴可能に。マスクCEOがツイート|Engadget
GrabとHOOQが提携
東南アジアを中心にライドシェア事業を展開するGrabはシンガポールに拠点を構えるユニコーン企業です。米国で展開しているUberと似たようなビジネスモデルで、徐々にビジネス規模を拡大しています。
2019年初頭、Grabは動画ストリーミングサービスを展開するHOOQという企業と提携。これによってGrabのアプリ上で動画コンテンツが見られるようになり、Grabのプラットホーム上で移動中の車内はもちろん、自宅でも動画ストリーミングサービスが楽しめるようになります。
GrabがHooqと提携、ビデオコンテンツ配信に進出|NewsPics
ここまで紹介してきたように、カーナビとスマートフォン、タブレットといったデバイスの垣根はなくなり、今まさに「車内エンタメ」とも言うべきさまざまな機能によって快適なドライブが楽しめるようになってきています。しかし、これらの機能を利用できるのは一部の高級車やスポーツカーだけなのでは?という考えをもつ人も多いはずです。実は車内エンタメは車種を問わず実装でき、そのカギを握っているのが「Androidナビ」というものです。
Androidナビとはその名の通り、Android OSを搭載したカーナビのことです。Androidナビにはスマートフォンのようなさまざまなアイコンが表示され、カーナビはもちろん、音楽再生やビデオ再生、音楽再生など多様なコンテンツが楽しめます。Android対応のスマートフォンを接続すれば、スマートフォンの映像をそのままカーナビに投影するミラーリング機能も利用でき、ドライバーや同乗者のスマートフォンに保存されているコンテンツをそのまま手軽に再生することもできます。
従来のカーナビの常識を覆すAndroidナビは、カー用品店はもちろん、さまざまなECサイトでも販売されており急激にニーズが高まっています。
従来のカーナビに比べて拡張された機能が利用できるAndroidナビは、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。今回は5つのポイントに絞って具体的に紹介していきます。
YouTubeやNetflixが見れる
Androidナビを選択する最大のメリットとして、YouTubeやNetflixなどの動画コンテンツは欠かせないポイントです。スマートフォンやタブレットと同様にネットワーク経由で動画のストリーミング再生が可能で、Wi-Fi環境さえ構築できれば車内にDVDやSDカードなどのメディアを持ち込むことなくさまざまな映像が楽しめます。
普段から自宅でスマートフォンやタブレットを使ってYouTubeを楽しんでいるお子様も多いと思いますが、その環境が車内でも構築できます。ロングドライブでお子様が飽きてしまい、落ち着いてドライブができないという悩みを抱える人も多いはず。そのような悩みを解決するためにも、Androidナビはおすすめです。
ちなみに、タブレットやスマートフォンで楽しむという使い方もありますが、動画に夢中になるあまり車酔いを起こしてしまったり、スマートフォンの充電が切れてしまったりということも懸念されます。そのような点でもAndroidナビを導入するメリットは大きいのではないでしょうか。
Androidナビはさまざまな形状があり、どんな車にも実装できる強みがあります。カーナビやカーオーディオの定番ともいえる1DIN、2DINサイズのAndroidナビはもちろん、オンダッシュ型のものまでさまざまです。そのため、どのような車種にも対応でき、バックカメラやリアモニターなどへの連携もできます。
純正据え付け型、一体型のカーナビで取り外しが難しい車種の場合は、たとえばAndroidタブレットをインパネ部分に固定し、HDMIケーブルやアナログケーブルなどで接続して楽しむこともできます。
Androidナビのような後付け型のカーナビは車を乗り換えた後でも換装でき、それまで使用してきたデータを引き続き利用できるのも大きなメリットといえるでしょう。そのため、「これから車を買い換える予定もあるし、それまで今の古いカーナビを我慢して使い続ける」という妥協も要りません。さらには、次の車を購入する際にはオーディオレス仕様にしてコストを抑えることにもつながるはずです。
Androidナビのなかには1DINサイズであるものの、従来のように格納式のモニターではなく、つねにモニターが出ているタイプのものもあります。格納式のカーナビは見た目がすっきりしているものの、必然的に画面の大きさはDINサイズに収まるように限られてしまいます。しかし、格納式ではなく常時モニターが固定されているAndroidナビはそのような制限もなく、大画面で車内エンタメを楽しめるメリットがあります。
もちろん車種によってインパネ部分への干渉や取り付け寸法など条件はありますが、質の高い映像を楽しむことを優先に考えるのであれば大画面対応のAndroidナビのほうがおすすめです。
GoogleのAndroid OSに対応したAndroidナビでは、当然のことながらナビ機能ではGoogleMapが使用されます。これまでのHDDナビやDVDナビの場合、数年おきに地図情報の更新が必要でした。これは本体やメディアに地図情報を保存しておく必要があるためで、地図情報が更新されないと新しくできた道路や経路を案内できなくなってしまいます。地図情報のアップデートは費用も高額で、場合によっては一度のアップデートで数万円単位のコストがかかってしまいます。
しかしGoogleMapの場合は、地図情報が本体に保存されるのではなく、クラウド上から都度最新の地図情報がダウンロードされる仕組みとなっています。すなわち、従来のカーナビのような地図情報のアップデートは不要であり、コストも手間もかかりません。新たに開通した道路や施設などにもいち早く対応でき、つねに最新の情報をもとに案内をしてくれるため、極めて効率的な移動を可能にします。
Androidナビは、一般的なカーナビに比べて本体が非常に安価なメリットがあります。メーカーや製品によっても価格は大きく異なりますが、2万円台から3万円台で購入できるものがほとんどです。安価なものでは1万円台の製品も多く、10万円以上が当たり前であったこれまでのカーナビに比べると圧倒的な安さといえます。
モニターの大きさやフルセグチューナー、内蔵ストレージ、CPUやメモリといったスペックによっても価格は異なるため、それぞれの用途にマッチした製品を選ぶのが良いでしょう。動画再生やGoogleMapでのカーナビの使用がメインであれば、1万円台、2万円台の安価な製品でも十分活用できるはずです。
Androidナビを車内に取り付ける際、どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか。3つのポイントに分けてご紹介します。
従来のカーナビとAndroidナビのもっとも大きな違いは、通信が前提となっているか否かという点です。従来のカーナビは本体やメディアに情報が記録されているため、GPSなどのアンテナはあるもののインターネットによるデータ通信は不要でした。しかし、Androidナビはスマートフォンやタブレットと同様にインターネット上からさまざまな情報を取得する必要があるため、通信環境にない場所だとその役割を果たすことができません。
モバイルWi-Fiルーターやスマートフォンのテザリング機能などを利用しなければならないため、別途通信料が発生します。たとえばスマートフォンを1ヶ月2GBのプランで契約していた場合、数時間のドライブ中にカーナビを使用しながらYouTubeを見続けていると2GBの上限に達してしまい、通信が途切れてしまう可能性もあります。
そのため、普段からどの程度通信を使用しているか、車に乗る頻度やカーナビを利用する頻度なども踏まえて検討しなければなりません。車内でのWi-Fi環境を実現するためには、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
車載用モバイルWiFiはどれがおすすめ?車内で利用する場合に注意しておきたいポイントも解説
Androidナビは海外製の製品も多く、取り付け手順が特殊なケースが多いです。カーナビやカーオーディオを取り付けする際にはカー用品店で商品を選び、その場で取り付け作業まで行ってもらうのが一般的ですが、ユーザーが持ち込んだ製品の取り付けは通常よりも工賃が高かったり、場合によっては取り付けを断られてしまうケースもあります。
Androidナビには最低限の取り付け方法がマニュアルとして記載されていますが、初めてカーナビを取り付ける人にとっては決して簡単な作業ではありません。自分自身で取り付けが難しい場合は電装を専門に扱う業者に相談したうえで購入を検討してみましょう。多くの場合は電源、スピーカー、ラジオアンテナ、イルミネーション、GPSアンテナなどの端子を個別に接続する必要があります。
AndroidナビはWi-Fi環境が必要ですが、当然のことながら山中や一部の海岸沿いなどでは電波が不安定になったり、一切通信ができなくなるところもあります。自宅や職場など普段よく訪れる場所はもちろんですが、そこに行くまでのルート、実家へ帰省する際のルートなどの電波状況をあらかじめ確認しておくようにしましょう。
どんなものにも【メリット・デメリット】は存在しますが、アンドロイドナビにする利点は大きいですね。
車は移動する自分だけの部屋のようなものですから、エンタメ化して快適なカーライフを送りましょう♪